【スタッフ活動レポート (前編)】ボランティア初体験。参加方法と準備物の紹介

ヤッサープロジェクトに参加し、6月から珠洲を取材するために通い始め、4ヶ月が経ちました。初めて訪れたとき、崩れた家屋が並ぶ光景に驚き、復興の遅さを感じましたが、9月には地域の祭りが開催されるなど、少しずつ前進している様子が見られました。

しかし、その翌週に大雨特別警報が発表され、珠洲では河川の氾濫や土砂崩れによる甚大な被害が報じられました。SNSでは友人たちが「マンパワーが必要」と訴えており、私も10月5日・6日にボランティア参加を決めました。

これまでボランティア経験が少なかった私ですが、同じような気持ちを抱える人にこの体験記が届けばと思い、記すことにしました。

  目次
・ボランティアへの申し込みにむけて
・「ボラキャンすず」でのボランティア活動
・準備物について、学びと反省

ボランティア活動に初参加。申し込みにむけて

珠洲にボランティアに行くにあたって、まずは何をみたらいいのか、戸惑いました。そんな中、珠洲の知人の多くが紹介していたのが、「珠洲市災害ボランティアセンター」、通称「ボラセン」でした。これは珠洲市社会福祉協議会が運営する、防災ボランティア活動の拠点で、災害時に設置されるそうです。被災者のニーズに合わせたボランティア活動の調整や、生活支援を行う重要な役割を担っています。

個人ボランティアの受付は「石川県県民ボランティアセンター特設サイト」で行われ、登録を完了すると、ボランティア募集情報から予約や応募が可能になります。

しかし、1週間前に確認したところ、応募はすべて満員で、珠洲を支えたいという人の多さを感じました。

次に、これまた多くの人が勧める「ボラキャンすず」のサイトを確認しました。「ボラキャンすず」は、mont-bell、アキレス株式会社、Softbankの協力のもと、ボランティアキャンプすず運営委員会が運営する団体です。ここでは全国から集まるボランティアが、鉢ヶ崎オートキャンプ場でテント泊ができるように環境を整えています。

活動のマッチングも行い、ボラセンの依頼に加えて、ボラセンでは対応できない地元の方々の困りごとにも応えています。

応募方法は簡単で、募集フォームに必要事項を記入すると、活動可能な日に合わせて活動内容を調整してくれます。「ボラキャンすず」の大きな特徴は、宿泊とセットでボランティアの活動を申し込むことができるということ。滞在や活動を通して参加者同士の交流も生まれます。

今回は参加枠があったようで、無事に申し込むことができました。

「ボラキャンすず」でのボランティア活動

朝の集合は8時、場所は鉢ヶ崎オートキャンプ場。現場までは乗り合いで移動できるとのことで、友人に送ってもらい、集合場所に向かいました。事前に何度かメールのやり取りはあったものの、前日の最終確認がなかったため、きちんと申し込みができているか不安を抱えながら、集合テントに入りました。

テントの中央には大きなホワイトボードがあり、そこに参加者の名前と活動場所が書かれていました。無事に自分の名前を確認でき、ほっと一安心。周囲を見渡すと、服装や装備から経験豊富だと思われる人たちが多く、頼もしく感じる一方で、「自分はこれで大丈夫だろうか」と再び不安を覚えました。しかし、親子連れも見かけ、幅広い層が参加していることに安心感もありました。

定刻になると、中心メンバーの方から挨拶と点呼が行われ、その日の分担が発表されます。その様子は、まるで芸術祭の朝礼のようでした。ユンボでの泥だしや1トンタンクの積み下ろしなど、専門的な作業は「プロボランティア」に割り振られ、一方で親子連れは稲刈りに。私は珠洲市のボランティアセンター(ボラセン)での活動に割り当てられ、飯田にあるボラセンの拠点に移動してから活動内容が知らされるとのことでした。

その日一緒に活動するメンバーは5人。その中でボランティア経験豊富な方がリーダーとなり、乗り合いでボラセンへと向かいました。ボラセンに着くと、リーダー同士で依頼された作業内容を相談し、チームごとに行く場所が決定されます。大型バスで来た団体ボランティアも多く参加していました。

私たちは兵庫から来たボランティア団体と合同で、若山地区の家で泥かき作業をすることに決定。泥で汚れることを想定して、そこで長靴に履き替えました。活動内容が事前にわからないため、リュックに装備をいっぱい詰めてきました。しかし、ボラセンでは長靴や軍手などの貸し出しも行われており、ここでヘルメットを借りました。

伺うお宅の状況は書面で共有されたものの、どの道具が必要なのかは現場に行くまでわかりません。リーダーや経験者の判断で、必要そうな道具を軽トラックに積み込み、9時半頃に現場へと移動しました。

到着後、リーダーが家主の方と話をし、依頼内容を確認。川の氾濫により家のギリギリまで浸水したものの、床上浸水は免れたとのこと。依頼内容は、家の側溝が泥で詰まってしまったため、泥の撤去を手伝ってほしいというものでした。

持ってきたスコップは私には重くてうまく扱えず、さらに側溝も狭かったので、小さなシャベルを使って泥をかくことにしました。膝をつくとジャージが濡れてしまい、持参した雨具に着替えました。

この日は晴天で、作業をしているとどんどん暑くなります。暑さに耐えきれず脱ごうとしたとき、他の参加者の方に「長袖の方がいいよ」と止められました。被災地では、肌を出すと何が原因で怪我をするかわからないとのこと。怪我をしてしまっては本末転倒ですから、そのまま長袖で作業を続けましたが、もっと薄い長袖を持ってくればよかったと後悔しました。周りを見渡すと、ピタっとしたインナーのような長袖を着ている人が多かったです。

作業はひたすら泥をかき出し、土嚢袋に詰め、それを道に置くという繰り返し。途方もなく感じながらも、次第に黙々と作業に没頭し、少し楽しいとさえ思う瞬間もありました。しかし、もし自分がこの家の人だったらと思うと、この作業はとてもじゃないけど、自分ではできないだろうと感じました。

地震の日から非日常を強いられ、片付けや慣れない手続きの中で選択を迫られ、さらに大雨に見舞われた住民たちに、この泥かきはあまりにも酷な作業です。

「この大雨で心が折れた」という声を多く聞きますが、泥をかき出していると、その気持ちが少しだけわかる気がしました。

泥は想像以上に重く、大雨が降った後はこの泥をかき出さなければ日常に戻れないのだと、今回の活動を通して初めて実感しました。これまでニュースで見ていた大雨被害の裏には、こうした重労働が待っているのだと、私は実際に体験してみて、ようやく気づいたのです。

そんなことを考えながら作業を続けていると、昼食の時間がやってきました。集めた泥を産廃場へ運び終え、しばしの休憩です。

今回はボラセンに戻って昼食を取ることになりましたが、普段は活動場所でそのまま食事を取ることも多いようです。食事は各自で持参しており、ほとんどの人はコンビニやスーパーでパンやおにぎりを買ってきていました。中には近くのスーパー「大丸」で購入したお弁当を持参している人もいました。

昼食中、同じチームの参加者たちと会話を交わしました。私のチームには岩手や岡山など、遠方から来ている人たちがいて、彼らは東日本大震災のときからボランティア活動に参加しているとのことでした。ほとんどの人が珠洲を訪れたのは震災後のボランティア活動が初めてで、そこから何度か足を運んでいるようでした。

ボラセンのスタッフが冷たい飲み物を用意してくれていたので、それを手に取り、午後の作業に戻ります。午後は泥かきの仕上げを行い、その後、泥で汚れた家財を高圧洗浄機(ケルヒャー)で掃除しました。15時頃に作業が一区切りつき、再び産廃場へ廃棄物を運び、1日の活動が終了となりました。
作業後は、使った道具を丁寧に洗い、キャンプ場に戻ります。活動後の時間は自由で、すぐに帰宅する人や、銭湯で疲れを癒やしに行く人もそれぞれでした。その後は、自分のテントでゆっくり過ごすも良し、交流テントでみんなと話すも良し。

1日の活動を終えると私はへとへとで、飯田のあみだ湯に入ったあとは、翌日の活動に備え、ゆっくり休むことにし、1日を終えました。

準備物について、学びと反省。

初めてのボランティア活動に向けて、不安の大きな要因は何よりも装備でした。当日にならないと具体的な活動内容がわからないため、どうしてもリュックがかさばってしまいます。ボラキャンの注意事項や、ボラセンが紹介している動画を参考にしながら準備を進めましたが、それでも装備が十分かどうか心配でした。

<持っていったもの>

  • ・長靴
  • ・安全靴
  • ・踏み抜きインソール(つま先が先芯で保護されている靴)
  • ・てぬぐい
  • ・タオル(多めに)
  • ・着替え(多めに)
  • ・絆創膏
  • ・ウェットティッシュ
  • ・雨具
  • ・粉塵マスク
  • ・軍手
  • ・帽子
  • ・保険証
  • ・ヘルメット(現地でレンタル)

<持っていけばよかったもの>

  • ・筆記用具(産廃場へ行く時に書類を書く場面があった)
  • ・ゴム手袋
  • ・ヘッドライト
  • ・充電器
  • ・替えの軍手(泥で汚れるため、翌日は取り替えたいと思った)

今回準備するにあたって、「踏み抜き防止インソール」というものを初めて知りました。このインソールは、クギやガラス片、瓦礫などから足裏を守るために、踏み抜き防止板が内蔵されています。津波や大雨による氾濫で、被災地には何が流れているかわからないため、足元の安全を守る上で必須だと感じました。

また、産廃場で教わったのは、「泥かき作業にはゴム手袋が必須」ということです。泥の中には生活排水が混じっている場合があり、直接肌に触れることで感染症のリスクがあるそうです。幸い、ボラセンで準備されていたゴム手袋を借りて作業できましたが、長袖のゴム手袋や、腕全体を覆うビニールの腕差しもあると安心です。

さらに、温度調整ができる服装も大切です。私は暑さを想定して半袖とジャンパーを持参しましたが、半袖は怪我のリスクが高いためおすすめできません。薄手の長袖がベストだったと後悔しました。周りを見ると、インナーのようなピタッとした長袖を着ている人が多かった印象です。

また、今回の作業では必要ありませんでしたが、ヘッドライトも用意しておくと良いようでした。特に停電している家屋内では、手元を照らすために役立ちます。

ボラセンやボラキャンではいくつかの装備を貸し出しているほか、珠洲にはホームセンターもあるので、現地で装備を調達することも可能です。もちろん事前準備が大切ですが、装備の心配で行動をためらう必要はないと実感しました。

活動場所への移動中、ひとりの参加者がこんなことを話してくれました。

「ボランティア、何てことなかったでしょう?僕は東日本大震災のボランティアをきっかけに、いくつかのボランティアに参加しているから、今回の地震や大雨のことでも珠洲が気になって来たんです。一度ボランティアをすると、アンテナが増えて、何か起きた時に意識が向くようになるんです」

この言葉を聞いて、これまで自分はボランティアに向いていないと思い、気恥ずかしさからその選択肢を避けていたことを後悔しました。ボランティア活動は、私が抱いていた偽善的なイメージとは異なり、ひとりひとりが自分にできることを、淡々とこなしていました。そして、その個々の力の積み重なりが、大きな力となっていくのだと知りました。

今回私たちが作業した側溝や家屋の中には、大きな重機を入れることができません。だからこそ、人力で少しずつ泥や土砂をかき出さなければなりません。珠洲には、今こそ大勢の力が必要です。泥をかき出す作業は、決して難しいことではありません。この小さな行動の積み重ねが、復興の大きな一歩となります。

ぜひ珠洲に足を運び、できることを探してみてください。きっと、大きな助けとなるはずです。

|後編に続く

記録日:2024年10月5日
記録者:テキスト・戸村華恵(ヤッサープロジェクトスタッフ)
記録場所:石川県珠洲市若山町

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