1.今月の活動
■奥能登珠洲ヤッサ―プロジェクト活動報告書
日頃より、奥能登珠洲ヤッサープロジェクトに対するご支援感謝申し上げます。この度、2024年度の活動記録がまとまりました。
震災から1年余りが経過し、珠洲を取り巻く環境も少しずつ変わり始めています。2025年度は、珠洲市やサポートスズと連携しながら、ツアーや10地区の催事などのお手伝いを通して、交流の機会をつくっていく予定です。引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。
■スズ・シアター・ミュージアム分館での作業
3月10日~14日の期間、国立歴史民俗博物館の川村清志さん、川邊咲子さんが中心となり、アーティストの南条嘉毅さん、鈴木泰人さん、舞台美術家のカミイケタクヤさんとともに、収蔵物や、展示棚の設営、部分的なメンテナンスを行いました。


珠洲市中の家々より集められた民具を収蔵・展示する施設として、スズ・シアター・ミュージアム〈光の方舟〉(2021年完成)に続いて2023年に開館した、スズ・シアター・ミュージアム分館〈大蔵ざらえ収蔵庫〉は、寄贈いただいた民具がそのお家ごとに納められています。震災で破損した収蔵棚を修繕し、さらに新設もし、震災後に譲り受けた民具も含め、今後どのように収蔵・展示・活用していくか検討していきます。
■3月9日 正院町での「まちあるき」参加
3月9日、珠洲市正院地区で行われた「まちあるき」に参加してきました。
2025年2月2日に設立した、珠洲市内では初となるまちづくり協議会「正院町未来会議」の活動のひとつで、震災後のまちの在り方を考えていくためにも、正院に暮らす住民の方が自分たちの町をあらためて知っていきたい、という想いから始まりました。
9日はその第一回目でした。公民館から出発し、そこから歩いて数分のところ”西浜”と呼ばれるエリアを、正院町の方、珠洲市内別地区の方、また市外からボランティアで滞在されている方も含め20名ほどで歩きはじめました。住居入りの地図を手に区長さんなど3名の方が案内役となり、地震により損壊し、復旧が必要な箇所の確認から、つい最近解体を終えたお家のこと、正院にお住まいの方も知らなかった祠を皆で見に行ったり、始終おしゃべりをしながら歩き回りました。



町を読み込んでいこう、と思いながら自分の目の前には既に解体を終えて更地となった土地がひろがり、傾いた電信柱や、土のう袋が積み上げられた堤防跡を見ていると、震災の前を思い出すことがもはや一人では難しいかもしれないことが痛感されました。
案内役の方の一人が、もう建物も無くなって海がすぐ向こうに見える場所を指さし、昔はここに劇場があったよと教えてくれました。港があったころ、大きな船は近寄れないので、艀をつかって積荷を陸へ上げる人夫の仕事があり、その方たちをねぎらうための劇場だったそうです。子供たちも、大人たちに交じってこっそりもぐりこんで覗いてたと、楽しそうに話してくれました。そのおばあちゃんは、90代のおばあちゃんに昔聞いた話だそうで、実際いつの話なのか詳しいことはわかりませんが、今はもう見ることができない町の風景について語り合う中からは、その頃の生活や生業を知ることができ、とても豊かな時間だと感じました。
まちあるきは、3月は毎週日曜日、全4回開催されました。



■バスガイド交流会への参加
奥能登国際芸術祭でアートバスガイドをして下さっていた方約20名中、3月14日に都合良い方14名を招いてバスガイド交流会が開かれ、サポートスズのメンバーも参加し、最近どのように珠洲の生活を過ごされているか等の近況を皆さんと共有し合いました。
サポートスズからは旅行業を取得したことや、これからサポートスズ独自で行っていく地域のイベントや芸術祭出展アーティストと連携をとりながら体験ツアーを行えたらと考えていること、珠洲市観光交流課と連携したツアーの案内など、ツアーについて今想定していることなどをご説明しました。
潮騒レストラン店長の加藤さんが作って下さった「潮騒弁当」を食べながら、終始和やかにこれからの展望を共有し合う会となりました。
■岩手県釜石市での東北リーダーズカンファレンスに参加しました

3月14日から15日、岩手県釜石市で行われた「東北リーダーズカンファレンス」に参加してきました。東北のリーダーや全国で活動する関係者が集い、具体的な行動や連携を話し合う場です。高島宏平さん(経済同友会副代表幹事)から「能登の復興にも参考になる」とお誘いいただき、参加しました。約100名の参加者が東北を中心に集まり、熱気に満ちた雰囲気でした。高島さんは、「AI時代は正解不正解ではない。ぼくの役割は地域の人たちのやる気のスイッチを押すことだ」と語ります。
多彩なテーマでの議論
カンファレンスでは、漁師による最近の海の変化の報告、高齢者の雇用創出の取り組み、地域通貨を利用した仮想自治体の事例など、様々なテーマが昼夜を問わず議論されました。政治家、財界人、社会活動家、研究者、ジャーナリストなど、異なるバックグラウンドの人々が対等に意見を交わします。夕食の後も会議がありますが、それでも話足りない人はスナックに移動。ぎゅうぎゅう詰めになりながらも、深夜まで熱い議論が繰り広げます。自己の利益を超えて「世界を良くしたい」、他者の良い取り組みを応援しようという思いが多くの参加者に浸透しているようでした。
能登に関連するセッション
カンファレンスでは能登に関するセッションも行われました。ETICの創業者、宮城治男さんの司会のもと、七尾の森山奈美さん、小泉進次郎さんなどがトークセッションを実施。森山さんの提唱する「発酵的復興」には多くの共感が寄せられ、小泉さんは政治・行政的視点から実行に移すうえでの課題についてアドバイスしていました。小泉さんはさらに能登の祭りの復活の重要性について語っていました。
復興の現場を視察
二日目の早朝、釜石市内の津波被害のあったエリアを視察しました。田んぼの合間に住宅がぽつぽつと立ち並び、復興を記念して作られたスタジアムがあります。出会ったのは、県立釜石高校の生徒たちで構成された「夢団」という語り部チーム。震災の記憶を伝える活動をしており、震災当時3歳だったという女子高生は、亡くなったおばさんの話を落ち着いて「語り」にします。「おばさんは寝たきりの祖母を助けに行ったが、津波にのまれてしまった…。もしおばさんが助かっていたら、同じ年頃の従妹と一緒に遊んでいたかもしれない」と。メンバーは自分に震災の記憶がなくても、学校の授業や家族への聞き取りで記憶をつなぎ、伝えています。4月には、夢団のメンバーが能登の支援に来てくれるとのことです。
能登と東北のつながり
東北の復興に取り組む方々が能登を支援してくれることは、心強いことです。次回のカンファレンスは東北復興のモデル地域とされる女川町で開催されるそうです。町長の須田善明さんが「女川も壊滅的な被害から立ち直った。能登も大丈夫。必要なことは何でもするから言ってほしい」と語ってくださったことは、励みとなりました。
■潮騒レストランでのできごと
〇3月1日、店長の加藤さんが企画し、ひな祭りWSを開催しました。大谷のお母さんたちとちらし寿司を作り、その後約30名ほどの住民の方とボランティアの方と一緒に昼食を取りました。みなさんが季節の行事を大事にしていることが伝わってきました。



〇3月22日には、PTA卒業式の前夜祭が潮騒レストランで行われました。市外に出ている親御さんたち含め総勢40名が集まり賑やかな会となりました。改めて子どもがいることの大切さを感じました。
〇奥能登国際芸術祭2017年、2023年に参加下さったアーティストの吉野央子さんより、木彫の魚の作品を寄贈いただきました。吉野さんは、海洋生物や魚の木彫作品を多く制作されており、芸術祭出品作品でも、珠洲で水揚げされる魚など多種多様な⿂類、海洋⽣物が一団となって回遊しているようすが、珠洲の民家で展開されました。今回は、その中から「鰆(さわら)」の作品をいただき、潮騒レストランの入り口近くに飾りました。


潮騒レストランは現在、5月オープンを目指して準備を進めています。
2.珠洲の様子
〈住居〉
2025年3月12日時点では、市内1ヶ所(9名)あった避難所が閉鎖し、仮設および復興住宅は、計画されていた戸数1,740戸が完了しています。
地震により全壊または半壊となった家屋等の解体・撤去を公費で賄う「公費解体」は、約70%が完了しており年内10月の解体完了を目指しています。
また、当初2025年1月31日が申請期限でしたが、2025年6月30日まで延長となりました。
〈土砂被害〉
2024年9月の豪雨によって、広域で土砂災害が起こりました。特に被害の深刻であった大谷地区では土砂撤去作業が続けられています。
2024年12月2日から行っていた大谷地区の宅内土砂撤去は、2025年3月31日に終了しました。
今後は、当地区での公費解体業者が複数入る予定で、ひきつづき住宅地を埋める土砂の撤去作業が進められています。
〈上下水道〉
断水は、早期復旧困難地区★戸を除き解消されています。宝立地区の吉野、鵜飼、春日野の一部は、復旧のめどはたっていません。大谷地区でも一部の地域では断水が続いており、真浦は今年5月末復旧予定です。
断水の続く地域については以下を参照下さい。
▼上水道・下水道_珠洲市
https://www.city.suzu.lg.jp/site/r6-suido/
〈交通情報〉
通行止めなどの交通情報は以下を参照ください。
▼石川みち情報ネット~冬道路情報~
https://douro.pref.ishikawa.lg.jp/