2024年5月の活動をご報告します。
1. 今月の活動
震災後に実施した応急処置を経て、作品修繕にむけて動き始めています。応急処置の後の経過観察などを専門家とともに行い、作品制作時にお世話になった珠洲市内の業者との打合せも叶いました。
2. 活動内容
■山本基作品「記憶への回廊」の点検と今後の修繕計画
山本基さんが作品点検に訪れました。
2023年5月5日の奥能登地震に持ちこたえましたが、今回の令和6年能登半島地震では、落下した天井板が当たったことにより塩の塔が崩れました。2021年の作品制作時には、ブロック状の塩を電子レンジで約二時間焼き、塩をまいて積み上げ、自然乾燥で固めるという方法をとりましたが、今後の修繕も出来る限り現状のものを利用していく考えです。
■スズ・シアター・ミュージアムの建築点検および修繕の打合せ
震災後、応急処置を実施してきましたが、建物全体の躯体を支える鉄骨部分のゆがみや、破損の激しい外壁面など、安全面に大きく関わる部分について、建築家の山岸綾さん、構造家の田尾玄秀さん木下工務店と橋本鉄工所の方に立ち会って頂き、経過観察を行い、今後の修繕方法について、打ち合わせしました。
2月に応急処置をした床下の束石のずれについても、その後問題なく、今後の工事も不要とのことです。
■大谷小中学校で網戸製作
大谷地区の避難所となっている大谷小中学校で、これから暑くなる季節に向けて、空調の無い体育館に網戸を製作しました。一緒に活動をしたボランティアの方は、沖縄から車中泊をしながら珠洲まで来られたそうで、たまたま車に積んでいたという木工工具が活躍しました。
■小山真徳作品「ボトルシップ」作品修繕
震災後、集落全体で地割れが発生し、作品自体も基礎から傾いてしまいましたが、作家とアートフロントギャラリーのスタッフで作業し、水平に戻すことが出来ました。木造の船の中の生物も無事です。その翌日は、作品のある北山集落の方たちの草刈り作業に参加しました。
■文化財レスキュー
スズ・シアター・ミュージアムに協力して頂いている国立歴史民俗博物館の川村清志さんも加わり、市内の個人宅やお寺、神社などで文化財レスキューが行われています。被災文化財等救援委員会が主体となるレスキューでは、有形・無形の文化財や古文書などの救出、一時保管と応急処置(濡れた資料の凍結乾燥など)といった活動が行われています。
■メディア出演など
5月31日 テレビ朝日|報道ステーション
被災後5カ月という節目で、芸術祭をきっかけとして移住した若者や地域の方がどのような思いで、どのような活動をしているか、放映されました。
番組サイト>>「珠洲のために」まち再生へ…芸術祭でつながった移住者の思い 能登地震5カ月
■助成金など
一般社団法人サポートスズの助成申請をサポートし、一般社団法人RCF 休眠預金等活用事業 2023年度緊急枠の助成金給付が決まりました。今後、サポートスズと連携しながら、ヤッサープロジェクトの活動を進めていきます。
3. アーティストたちの動き
■奥村浩之さん
作品「風と波」の点検のため、珠洲に滞在しました。作品制作時に設置を請け負った門寺建設の方にも会えたようです。作品は倒壊することなく立っていますが、一部欠けてしまった石を作家が持ち帰り、保管しています。
■弓指寛治さん
作品「プレイス・ビヨンド」に登場する南方寶作さんのご子息が暮らす馬緤地区へボランティア活動に入られました。また、この作品を販売し売り上げを珠洲市への義援金として寄付されました。
■橋本雅也さん
金沢市柿木畠にある「shirasagi/白鷺美術」にて個展「燈す」を開催しました。
入場料金の全額と作品集等、物販の売り上げの一部を、令和6年能登半島地震の義援金として寄付されました。
■鈴木泰人さん
珠洲市野々江町にある銭湯「海浜あみだ湯」へボランティア活動に入り、風呂焚き用ボイラーへの薪くべ、キッチンの清掃や整頓、賄いなどを行いました。あみだ湯以外でも、割れた窓の応急処置などをされました。
■中島伽耶子さん
珠洲市正院地区ので避難所となっている旧飯塚保育所に滞在し、珠洲で被災した作品「あかるい家」の応急処置と、建物の家主のお家の片付けなどボランティア活動を行いました。
4. 珠洲の様子
6月3日午前6:31頃、石川県能登地方を震源とする地震が起き、珠洲市で震度5を観測しました。震度5強以上を観測したのは1月6日以来で、元日の能登半島地震の余震とみられています。海面変動は観測されましたが、津波の被害はありませんでした。
珠洲市内には現在30か所の避難所があり、約400人が避難しています。
公費解体の説明会が市内全10地区で開催されました。正院地区ではすでに解体が進められていますが、市内での対象となる建物8,600棟余りのうち、申請を受け付けたのは3,300棟余り、解体や撤去に至っていない建物が多いようです。
大型連休中、二次避難先から珠洲の自宅の片付けに戻って来ている方もいらっしゃいました。
上水道は、早期復旧困難地区(宝立浄水場、大谷浄水場、清水浄水場の計1,076戸)を除き、断水が解消しましたが、自宅内で漏水しているなどまだ水道が使えない家も多く、引き続き給水支援が行われています。
復興計画策定に向けた意見交換会が、6月に珠洲市内の全10地区で開催されます。
▼開催地区・日時
5.6月の活動予定
スズ・シアター・ミュージアムの作品の修繕を、関係作家及び専門家と行い、来るべき開館に備えていく予定です。文化財レスキューとも連携しながら、震災前後の出来事や地元の人の思いなどを記録していく予定です。地域の方の声を広く拾い、珠洲市が進める復興計画にも提言していきます。